建設機械とは

ショベルの用途

油圧ショベルは、他の掘削機やブルドーザ、ホイールローダと比べると、次のようなすぐれた特性をもっています。

  • ・アタッチメント、旋回、走行の動作を組み合わせると、複雑な動きが容易に行える
  • ・リーチが長く、1ヵ所にいて、広い範囲の作業ができる
  • ・全旋回できるので狭い場所でも使用できる
  • ・溝や根切りが正確に掘削できる
  • ・アタッチメントを伸ばせば、本体の入れない水中や湿地の掘削もできる
  • ・掘削だけでなく、積込み、整地もできる
  • ・アタッチメントの交換が容易で、目的に応じて多用途に使用できる

ショベル各部の名称と動き

油圧ショベルは3つの要素から構成されています。

1.アタッチメント

アタッチメントは作業装置と呼ばれるように、直接、土を掘ったり、均したりして作業をする部分です。ブーム、アーム、バケットから構成され、これらはそれぞれ、油圧シリンダで動かされます。アタッチメントは、人間の腕と同じ原理で作られていて、ブームは上腕、アームは前腕、バケットリンクは手首、バケットは手のひらの働きをします。これらのフロントアタッチメントは、さまざまな形状のものに取り替えて、幅広い用途に使用できます。

2.上部旋回体

上部旋回体は主に、エンジンや油圧ポンプなどの動力源とそれらに付随する補器類で構成されています。基本的にはどの機種のショベルも同じ構造をしています。

3.下部走行体

下部走行体は、その名の通り機械を走行させる為の機器で構成されています。

油圧ショベルの作動のしくみ

油圧ショベルはその名の通り、掘削、旋回、走行の全動作を油圧の力で行います。エンジンの出力軸の回転で油圧ポンプが駆動され、作動油が回路に押し出されます。作動油はメインコントロールバルブに送られ、ここで操作レバーの動きに従ってブーム、アーム、バケットの各油圧シリンダや旋回・走行油圧モータへ振り分けられます。

各アクチュエータへ作動油が入ることでショベルは稼働しますが、各動作の速度は操作レバーやスイッチで油圧ポンプの吐出量を変えたり、メインコントロールバルブの通路を開閉して油圧モータや油圧シリンダへ流れ込む作動油の量を変えて調節します。油圧モータや油圧シリンダへ流れ込む作動油の通路が閉じれば動作が停止します。これが油圧ブレーキです。

油圧回路とポンプ制御

油圧ショベルは通常、2個の可変容量ピストンポンプを1台のエンジンで駆動し、油圧ポンプから吐出された作動油が4連+4連のメインコントロールバルブへ流れ込み、ここでレバー操作に応じて各油圧モータや油圧シリンダへ分配されます。 2個以上の可変容量ポンプを1台のエンジンで駆動する場合、エンジンの出力をどんな割合で各油圧ポンプに配分するかを決める方法をポンプ馬力制御といいます。また作業をしていないときやリリーフ時に油圧ポンプが無駄な作動油を吐出するのを防ぐためにポンプの吐出流量を低減するのがポンプ流量制御です。

ポンプ馬力制御

油圧ポンプ出力=ポンプの圧力×流量≦エンジン馬力となります。各ポンプに必要なだけエンジン馬力を供給していると、そのエンジンの能力を超えた場合にエンストしてしまいます。そのため各油圧ポンプに供給するエンジン馬力の合計がそのエンジンの能力を超えないように油圧ポンプを制御する必要があり、これがポンプ馬力制御です。圧力ポンプを制御する為には、圧力か流量を変えればいいが、圧力は負荷という外的要因で決まる為、実際にはポンプ流量を変えることによって油圧ポンプ出力つまりは各油圧ポンプに吸収されるエンジン馬力を変えています。

ポンプ流動制御

可変容量ポンプは圧力が一定以下に下がると吐出量が最大になります。そのため負荷がかかっていない(作業をしていない)ときには常に最大流量を吐出し、作動油は使われないままタンクへ戻ってしまうのでロスを生じます。また負荷が課題になってリリーフした時も同様に大量の作動油がタンクへ戻ってしまいます。これを防ぐためにレバー中立やリリーフの状態を油圧回路の圧力から検出して油圧ポンプに伝え、吐出量を最小に絞るのがポンプ流動制御です。

メインコントロールバルブの仕組み

油圧ポンプから吐出された作動油をどのアクチュエータ(油圧シリンダや油圧モータ)に、どの方向で、どの程度の量を供給するかを決定するバルブの集まりがメインコントロールバルブです。言い換えればメインコントロールバルブはどの動作をどの方向に、どんな速さで行うかを制御します。ブーム、アーム、バケット、旋回、右走行、左走行それぞれのアクチュエータを受け持つ、6つの方向切換弁と2つの合流バルブから構成され、8つのバルブは4連ずつつないで2ブロックにまとめられています。

1つのバルブには作動油の出入り口が2つずつ設けられていて、それぞれの油圧シリンダ、油圧モータの出入り口とつながっています。例えばブームを上げる操作をすると、ブーム操作レバーの動きがブームバルブに伝わって出入り口が開き、ブームシリンダのヘッド側に作動油が流れ込んでブームが上がります。このときメインコントロールバルブは作動油の流れの方向を切り替えるだけでなく、出入口の開き加減によって作動油の流量を調節して動作の速度をコントロールします。

その他のショベル駆動方式

現在のショベル市場では、ディーゼルエンジン駆動の油圧ショベルが圧倒的に多く生産・販売されています。一方で地球温暖化や排ガス規制への対応を考慮してハイブリッドショベルの開発も活発化しており、コベルコ建機でも販売を開始しています。また外部から受電して稼働する電動式のショベルも金属リサイクル機械を中心に実用化されています。

電動式ショベルは、外部の電源から給電して電動モータを動かし、電動モータの駆動力で油圧ポンプを駆動する仕組みで、エンジン式に比べてCO2の低減効果も大きくなります。
電動式は排気ガスを排出しないため、建屋やトンネル内の作業用として早くから実用化されてきましたが、現状では電源の確保およびケーブルと電源がつながれていることによる行動範囲の制限が課題となっており、燃料電池の汎用化が期待されています。

ハイブリッドショベルはディーゼルエンジンと蓄電池など、異なる2つ以上の動力源で油圧ポンプを駆動して、余剰エネルギーを回生利用する仕組みです。ただしハイブリッド式でもほとんどのアクチュエータを動かすのは油圧で、油圧ポンプを駆動する動力源をより環境負荷の低いものとする方策がハイブリッド式になります。ハイブリッドショベルはエネルギーを蓄えるのにバッテリ(蓄電池)を使用するか、キャパシタ(蓄電器)を使用するかによって2系統に大別されます。

バッテリは充電による電力エネルギーを化学エネルギーに変換して蓄えるもので大きな電力を持続して出力することが可能です。キャパシタは電気エネルギーを電気のまま蓄える為、短時間で充電できますが、大容量化が難しく、放電も一気で持続性がありません。コベルコ建機のハイブリッドショベル「SK80H」はバッテリ式です。

コベルコ建機のハイブリッドショベル(SK80H)のハイブリッドシステムは、低負荷時にエンジンの余剰エネルギーをバッテリに蓄積し、高負荷時にそのエネルギーでエンジンをアシストすることでエンジン負荷を標準化します。そのため従来のシステムよりもエンジンを小型化でき、燃費が向上します。

加えて旋回減速時のエネルギーを回収すると共に、エンジンのアイドリング時のエネルギーもバッテリに蓄積して再利用するという建設機械では初めてのコベルコ独自の技術で燃費を一層改善させています。

具体的には、エンジン出力の余剰を電動発動機で電力エネルギーに変えて蓄電する方法と旋回制動時の慣性エネルギーを電力エネルギーに回生させて蓄電する方法で蓄積した電力エネルギーを、重負荷時のアシスト動力として旋回モータの駆動や発電電動機を駆動しての油圧ポンプの駆動に利用します。

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